モンスターペイシェントへの対処法

モンスターペイシェントの心理とは

モンスターペイシェントとは、医師やスタッフに対して理不尽な要求を行ったり、暴力や暴言を繰り返したりする患者様のことを指します。
「モンスター」と言っても、最初からこのような言動をすることを目的に通院している人はごく少数です。症状を治してもらいたくて通院していた患者様が、いつの間にか医院を敵視して理不尽な言動を繰り返すようになってしまうというケースがほとんどです。

 

では、なぜ普通の患者様がモンスター化してしまうのでしょうか。その原因は大きく分けて二つあります。

医師と患者様の間の誤解がクレームを発生させる

患者様が医師に期待していることと、実際に医師が患者様に対して行えることの間には、大きな誤解があります。その誤解を放置したまま治療を進めると、良くない結果が出た時に、たとえそれがミスと言える程度のものでなくても、患者様は医師に対して強い不満を抱き、それがクレームへと発展してしまうことになります。

 

では、クレームの原因となる患者様の期待とは、一体どのようなものなのでしょうか。

治療すれば必ず治る、痛みがなくなる

患者様は症状を治すために来院しているので、治療をすれば必ず症状は治るはずだし、痛みがある場合はその痛みが完全になくなると期待しています。
なので、治療したのに治らなかったり、痛みが残っていたりすると、「医師がミスをしたのでは」と考えるようになってしまうのです。

検査をしたら必ず確定診断が出る

患者様は、検査さえすれば必ず病名が特定できると期待しています。なので、検査をしても確定診断が出ないと、「わざと無駄な検査をさせられたんだ」と医師を疑うようになってしまいます。

どの医師が診察しても同じ治療方針になる

患者様は、診断に対するベストな治療方針というものは一つしかないと考えがちです。したがって、複数の医師が違う治療方針を提案してきた場合は、どちらかが正しくてどちらかが間違っていると考えるようになります。

自分が主体的に決断しなくても、医師が最善の治療を行ってくれる

この考え方の根底には、「医師は専門家だから、自分の体や病気のことも自分よりちゃんと把握しているに違いない」という心理があります。そこから、「医師が全て決めてくれるはずだから、自分が説明をきちんと聞いたり、治療のリスクを判断したりする必要はないだろう」と考えてしまいます。
その結果、リスクについてきちんと判断せずに治療方針に同意してしまい、後からそのリスクが顕在化した時に、「医師がちゃんと説明してくれなかった」「間違った治療方針を提案された」と感じてしまうのです。

 

医師と患者様という立場の違いがある以上、このような誤解が生じるのは仕方のないことです。しかし、医師の側がその誤解の存在を理解した上で患者様に接することで、クレームを未然に防ぐことができるようになります。
治療をしたのに痛みがなくならない時や、検査をしたのに確定診断が出せなかった時、他の医師と違う治療方針を提案した時には、患者様の表情や言葉のどこかに不満のサインが現れるはずです。それを無視せずに、治療したからといって痛みがなくなるとは限らないこと、検査をしても診断が出ない時もあること、最適な治療方針というのは医師によって異なることを丁寧に説明するようにしましょう。

 

また、治療のリスクについて説明する時は、「患者様は主体的に決断したがっていないかもしれない」ということを頭に入れておくようにしましょう。医師は専門家であるとはいえ、最終的に自分の体のことを決めるのは患者様自身であることをきちんと説明した上で治療方針について判断していただくようにすれば、後になって治療のリスクが顕在化した時でも、患者様に「自分で決めたことだから」と受け入れていただけるようになります。

医師の対応が患者様をクレーマー化させてしまう

ミスや不手際の内容ではなく、医師の対応の仕方によって、ごく普通の患者様がモンスターペイシェントになってしまうこともあります。

患者様が不満を訴えた時に話を聞かない

患者様に不満を言われても、「大したことではないから」「解決できるわけではないから」と聞き流してしまいたくなるかもしれません。
しかし、不満というものは、相手が不満を感じているということを理解して、それがどのような不満なのかを聞き取ることで解消されることがほとんどです。
逆に、聞いても意味がない、こっちは専門家なのだから任せてくれればそれでいいという態度を取ってしまうと、患者様の不満はますます強くなってしまいます。

痛くて辛いということをわかってくれない

患者様が一番望んでいるのは、謝ってもらうことやお金を払ってもらうことではなく、症状や痛みを治してもらうことです。もし治らなくても、痛い、辛いという気持ちを医師が理解して共感すれば、それで患者様が納得してくれることも多いです。
反対に、医師が「治療したはずなのに痛みが残っているわけがない」「気にしすぎているだけではないか」と言ってしまうのは絶対に避けましょう。

謝ればいいんだろう、お金を返せばいいんだろうという態度を取る

患者様は医師を責めたいわけでも、お金がほしいわけでもありません。ミスや不手際を起こした時に重要なのは、謝ったりお金を払ったりという「結果」よりも、患者様が痛くて辛い思いをしていることに共感するという「過程」です。
謝ればいい、お金を払えばいいと医師が考えていたら、それは必ず患者様にも伝わります。そうすると、「辛い思いをしているのにそんな態度を取るなんて」と不信感を抱かれてしまい、トラブルがこじれてしまうことになります。

 

このように、患者様がモンスターペイシェントとなってしまうのには様々な理由があります。「モンスター」と言っても、決して正体不明の恐ろしい存在ということではありません。モンスターペイシェントになってしまう理由を理解した上で的確な対処法を採れば、クレームの発生を最小限に抑えることができるようになります。

モンスターペイシェントへの対処法とは

では、それでもモンスターペイシェント化してしまった患者様からクレームが入った場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

反論や説得をしようとしない

まず、クレームが入った時に一番してはいけないのは、反論したり説得したりしようとすることです。医師としては、最善を尽くしているのにクレームを付けられてしまうと、「そんなことはない」と主張したくなってしまうかもしれませんが、反論をしてしまうと、その時点から患者様と医師の間に対立関係が生まれてしまいます。
一度「この医師は敵だ」と思われてしまうと、その対決姿勢を解くのは非常に難しいのです。

 

そこで、反論や説得ではなく、患者様の言いたいことをよく聞き取るようにしましょう。そうすることで、患者様自身が、自分が何を不満に感じてクレームを付けているのかを整理することができます。
患者様がモンスターペイシェントになってしまうのは上に挙げたような原因によるものですが、モンスター化した後にさらに怒りがエスカレートしてしまうのは、患者様自身が何に怒っているのか自分でもよくわからないことが大きな原因です。怒っているから何とかしてほしい、でも何が不満かわからない、そしてそのモヤモヤ感が怒りに拍車をかけてしまう……という悪循環によって、患者様の言動がますます激化していくのです。

まずは、傾聴に徹する

患者様の不満点を聞き取り、具体的な不満点を整理すると、多くの場合、その時点で怒りの感情は静まります。
「クレームを付けられている」と感じるとどうしても反論したくなってしまうかもしれませんが、医師からはクレーマーに見えていても、その患者様が思っているのは、まず「助けてほしい」ということです。「助けてほしい」と思っている患者様に反論してもメリットは何もありません。まずは何が不満なのかを落ち着いて聞き取るようにしましょう。

初期対応の流れ

実際にクレームが入った時に取る対応の流れは以下の通りです。

対応を受付や電話口で済ませようとしない

患者様からのクレームを最初に受けたスタッフは、その場で全ての対応を済ませてしまわないようにしましょう。責任のないスタッフがその場で謝罪しても解決にはなりませんし、患者様の気持ちも収まりません。

 

受付でクレームを受けた場合は、事情を聞くために、まず別室に移動してもらうようにしましょう。これは他の患者様への影響を考慮するためでもありますが、それ以外にも、患者様の動機を判断する効果もあります。別室への移動を拒否して受付や待合室で話したがる患者様は、問題に対応してもらうことよりも、他の患者様に聞かせることを目的としている可能性があると考えられるからです。

 

電話の場合は、スタッフが患者様から事情を聞いたうえで、「折り返しご連絡します」と言って一度電話を切りましょう。そして医師に報告をして、どのように対応するか判断した上で、スタッフが再度折り返し電話をして来院してもらう日時を決めます。
そして、「こういう患者様が話をしに来る」ということをスタッフ全体に周知します。患者様が指定した通りの日時にいらっしゃらないこともあるため、クレーム対応を行っている患者様がいるということはスタッフ全員が知っておいた方が、後で不手際が起きてしまう心配もなくなります。

聞き取りを行う

別室へ移動していただく、もしくは電話の後で来院していただくことができたら、今度は聞き取りを行いましょう。
この聞き取りも、医師ではなくスタッフが行います。患者様はミスをされたと思っているわけですから、そのミスの当事者である医師と対峙すると、怒りがエスカレートしてしまう可能性が高いです。そこで、第三者であるスタッフが聞き取りを行うようにすれば、患者様も冷静になることができます。
この時のポイントは、反論や説得をしようとするのではなく、あくまで事情の聞き取りにとどめることです。患者様が何に不満を感じているのか、どうしてほしいと考えているのかをスタッフが整理しながら聞き取ります。具体的に話しているうちに、患者様自身が事態を整理することができますし、それによって気持ちが落ち着いてくれば、モンスターペイシェントになってしまうことはほとんどなくなります。

弁護士に依頼する

聞き取りを行ってもまだ納得してもらえない場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士を介入させる前に医師が直接患者様に対応せざるを得ない場合は、「不用意に謝罪したり謝罪文を書いたりしない」「示談書を作成せずにお金を支払わない」という二点に注意しましょう。聞き取りを医師が行う場合であっても、その場で謝罪やお金の支払いは行わず、「後日正式な回答をさせていただきます」と告げて一度お引き取りいただくようにしましょう。

 

弁護士を間に入れることで患者様の態度がますます激化することを心配する医師も多いですが、弁護士を介入させることを告げる時の言い方に気を配っていただければ、納得して話し合いをしてもらえるようになります。
具体的には、「適切に誠意をもって対応させていただくため、今後の話し合いは専門家に依頼いたします」と伝えるようにしましょう。
聞き取りの時と同じで、医師ではない第三者とやりとりをすることによって、やはり患者様も冷静になることができます。また、モンスター化している患者様であっても、弁護士に対して無理な要求はしにくいものです。
一番よくないのは、医師が自ら対応して、患者様の不満や主張に「それは違います」と反論し続けたり、お金を払えばいいんだろうという態度を見せてしまったりすることです。そのような対応を行っても、患者様の根本的な不満は解消されませんし、それどころか不満にさらに拍車をかけてしまうことになります。こうなると、患者様の怒りの収まりどころがなくなってどんどん理不尽な要求を行うようになり、医院の側も対応に追われて疲弊していくという悪循環に陥ってしまいます。

まとめ

このように、患者様がモンスターペイシェントになるのには理由があり、また医師の対応がモンスターペイシェントを生んでしまうこともあります。
それを理解した上で日頃の診療やクレーム対応を行えば、モンスターペイシェントの発生を防ぐことができるようになります。特にクレームへの対応は、医師だけでなくスタッフへの教育も重要です。モンスターペイシェントを生まないためにも、医院内で初期対応マニュアルを作成して、何かあったらすぐに弁護士へという流れを徹底しましょう。

 

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