スタッフから、
「他のスタッフに物を盗まれた」
「医院内でいじめを受けている」
「セクハラをされた」
「パワハラをされた」
などと相談を受けたことはありませんか。
信頼しているスタッフの間でトラブルがあった。その事実は経営者としては心苦しく、速やかに解決したいところではありますが、誤った対応はさらなるトラブルを招きます。
以下では、スタッフ間でトラブルが発生した際に注意すべきポイントを紹介するとともに、その解決策を検討します。
当事者同士の話し合いはNG
たとえば、スタッフから「医院内でいじめを受けている」と相談を受けた場合、どのような解決策が考えられるでしょうか。
このケースにおいて、もっともやってはいけないのが、トラブルの当事者同士を話し合わせることです。当事者同士が面と向かって話をすると、「やった・やってない」、「言った・言ってない」の水掛け論になり、お互いの感情も相まって事態の収拾がつかなくなります。
当然双方の主張が食い違うため、間に入る経営者としてはとりあえず一方に謝罪をさせてその場を治めようとしますが、これでは根本的な解決には至りません。
このようなスタッフ間でのトラブルが発生した場合、当事務所では、弁護士が当事者それぞれから個別に聞き取りを行い、両者の主張や事実関係を確認するという形で解決の切り口を探します。そうすることで、「なぜトラブルが起こっているのか」という本質的な部分を把握することができるのです。
聞き取りは4つのプロセスで
次に、当事者から聞き取りを行う際には、
①受容 → ②共感 → ③要約 → ④アドバイス
という4つのステップを心掛けましょう。
この4つの項目を押さえることで、どのような事情でどのようなトラブルが起きているのかをきちんと把握することができ、解決への大きなヒントをつかむことができます。
①受容:相手の言っていること、思っていることを受け入れること
第一に、上司へ相談をしてくるようなスタッフは、その内容に関わらず、現状に不安や不満を感じており、自分自身では手一杯の状態になってしまっているといえます。したがって、まずは不安や不満を感じているというスタッフの「主観」と、何が起こっているのかというトラブルの「事実」を分けて聞き出すようにしましょう。
たとえば、「同僚のあのスタッフは嫌な人なんです!」と相談されたとします。実際、そのスタッフは周囲の人に対して迷惑をかけていることもあるかもしれません。ただし、そのスタッフが「嫌な人」であるか否かは相談者自身の主観であって、事実ではありません。
相談を受けた側は、主観と事実をきちんと切り分けて、「そのスタッフのどういうところが嫌なのか」「なぜ嫌だと思うようになったのか」聞いてみるようにしましょう。
こうすることで、相談者自身が「何を不満に感じているのか」ということを具体的に整理することができます。
②共感:相手の気持ちに共感すること
第二に、相談者が「つらい」「悩んでいる」「落ち込んでいる」といった精神状態であることについて、あいづちを交え、「大変だね」と声をかけるなど、「共感」の姿勢を示しましょう。共感してくれる人がいる、その事実だけで多くの人は気持ちが和らぎます。
一方で、この段階ではまだ解決策を提示する必要はありません。
③要約:相手の言いたいことを正確にまとめること
第三に、「こういうことが起きていて、それについてあなたはこう思っているんですね」と、相談者の言いたいことを正確にまとめましょう。
このように言葉でまとめることで、相談者は、それまで抱えていた不安や不満から少しずつ解放されていきます。トラブルというものは人の心が作り出すものですから、自分のことを理解してくれたという気持ちになるだけで、その多くは解決するのです。
④アドバイス:忠告や助言をすること
そして最後にアドバイスのステップを迎えます。要約までの段階でトラブルを解決することができればアドバイスは必要ありませんが、当然、共感だけでは解決しない場合も出てくるでしょう。
したがって、要約の部分で把握した事情とスタッフの気持ちや主張を踏まえ、しっかりと事実確認を行った上でアドバイスを行いましょう。
人間関係のトラブルならば、相手方の話も聞いて、今後はこのようにしていこうと説明します。一方職場環境に問題があるという相談ならば、その原因にはこのような事実があるので、こう改善していこうと提案をします。
この時、経営者側からの一方的な内容の指示や通告をするのではなく、経営者自身も含めたスタッフ全員が一丸となって改善していこうという協調的な姿勢を示すことで、これまで以上の信頼関係を築くこともできるでしょう。
このように、4つのプロセスで聞き取りを行うことで、多くのトラブルを解消させることができます。
当事務所では、スタッフの間で発生したトラブルの解消もお手伝いしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。