医師による窃盗事件
医師(医師、歯科医師)が窃盗事件を起こし、医師法が定める医師の相対的欠格事由(医師法第4条)に該当することとなった場合には、医道審議会で審議が行われた後、厚生労働大臣から行政処分が下されます。
行政処分には、処分の程度が軽い順に、戒告、三年以内の医業停止、医師免許の取消しといった3種類の処分が法定されています。このうち、戒告を除く行政処分は、文字通り、医業が行えなくなるという点で医師にとって、非常に不利益な処分を下されるということになります。
医師の窃盗事件に対する行政処分の考え方
窃盗事件については、医師としての業務に直接かかわる事犯ではありませんが、医師としての品位を損ない、患者様・スタッフその他の人的信頼関係を喪失させるものであるから、行政処分を下すべきであると考えられています。
なお、この場合には、刑事処分の量刑などを参考に決定されます。
※1:医師法第七条第二項
2 医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
※2:医師法第四条
次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
※3:窃盗罪(刑法第二百三十五条)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
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万が一窃盗事件を起こしてしまったとしても、それは医師としての業務に直接関わる行為ではありません。しかしながら、患者様やスタッフ等との信頼関係があってこそ医療は成り立つものであり、医師としての品位を損なう行為は当然処分の対象となります。刑事事件で罰金以上の刑を犯してしまった場合には、医道審議会の審査対象となり、刑事罰のほかに医師免許の停止や取消し処分がなされるおそれがあります。表沙汰にはしたくないからと安易に考えてはいけません。刑事事件となるおそれがある場合には、起訴猶予処分や不起訴処分を求め、また医院の存続に努めるよう速やかな弁護活動が必要となります。
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